こんな生活、もう我慢できない…。自堕落な夫と身勝手な息子に翻弄される主婦の救いのない日々。昔、捨てた女が新婚家庭にかけてきた電話。突然、高校時代の友人から招待された披露宴。公園デビューした若い母親を苦しめる得体の知れない知人。マンションの隣室から臭う腐臭…。平穏な日常にひそむ狂気と恐怖を描きだす八編。平凡で幸せな結婚や家庭に退屈しているあなたへ贈る傑作短編集。 表題作の「崩れる」がさすがに一番おもしろかったです。 (解説で桐野夏生さんも褒めています。この短編集を解説するのにこれ以上はない方ですよね) 結婚生活に女性が毎日毎日感じているイライラや不満、ぶつけどころの無い怒りが、夏のしつこい暑さと共にとてもよく表現されていると思います。 作者名を知らずに読んでしまったら、女性作家が書いたのではないかと思うくらいでした。 “貫井さんは結婚されていて、結婚生活に対するやるせない不満を作品に昇華したんだわ”と思っていたら、「崩れる」を書いた当時は独身で、この短編を出した数ヶ月後に結婚されたそうなんですよね。 (分からないものだわぁ…) 「崩れる」の主人公はパート勤めに出ている主婦、それも家計を助ける為のパートではなく大黒柱として生活費を稼ぐ為にパートに出ている。なのに、ぐうたら亭主は何もせず、息子はせっかく就職した銀行を二ヶ月で辞めて家で“ぐうたら亭主”と同じようにぐうたらぐうたらしている。 ある日、仕事が終わったはいいが、夕方になってもクソ暑い。なのに、帰りのバスは定期切れで小銭も無く乗りそびれ、ヘトヘトになって帰ってきてみると、夕飯の支度が待っている。 家にいてテレビばかりを見ているのに、亭主ときたら雨が降っても洗濯物も取り込まない。クーラーを入れているくせに窓も閉めない。その亭主そっくりのバカ息子はエラソーに親父に意見し喧嘩までおっ始める。 まぁ、どんだけ“ぐうたら”やねんっ!口ばっかやねん!と、主人公と一緒にイライラの最高潮に達すると同時に、話はクライマックスへ、カタルシスへと向かって行きます。 短編なのに、たっぷりイライラさせてくれて、最後は凄くスッキリさせてくれます。 “あーあ…”てなラストなんですけど、取り返しのつかない事をしてしまう主人公に“サッパリしてよかったじゃない”と言ってあげたくなります。 一人ものの立場としては“カスを掴んだ事を認めるなら、とっとと離婚すればいいのに”と思うのですが、夫婦は、結婚生活とは、そう簡単にはいかないようですね。 一度始めてしまったら、簡単に引き返せないのが結婚なのでしょう。 表題作が一番インパクトが強いのですが、他の短編もおもしろいので、是非、ご一読を。 崩れる―結婚にまつわる八つの風景 (集英社文庫)〔貫井徳郎〕 【目次】 崩れる 怯える 憑かれる 追われる 壊れる 誘われる 腐れる 見られる 解説:桐野夏生
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