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zoom RSS あなたが裁く!「罪と罰」から「1Q84」まで〔森炎〕

<<   作成日時 : 2011/03/06 15:29   >>

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画像完全犯罪か冤罪か!?
「異邦人」「死刑台のエレベーター」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」から「容疑者Xの献身」「模倣犯」「悪人」まで、裁判員裁判にかけたら、死刑か無罪か、懲役何年か? 
前裁判官がリアルに指南!


ハヤカワミステリマガジンに書評が出ていたので購入。
予想以上におもしろい内容でした。
裁判や刑罰について映画、小説を使って解説されているので楽しんで読めますし、フィクションだけでなく実際に起きた事件の解説もあり、変に小難しくしていないところが親切な本でした。

例えば、死刑にも判断基準は様々で“1人殺害では原則的に死刑にはならない”は、わりと知られている事だと思いますが、
男女関係のもつれによる殺人や暴力団同士の殺人、一家無理心中は刑が軽くなるとか、
重要人物を殺してもそれだけで刑は重くならない(刑事裁判は、あくまで人命は平等、軽重はないという理念に立脚しているから)
など、この本で初めて知りました。

どれもこれも興味深い内容ですが、いくつか印象に残ったものを書き出してみます。

エミール・ゾラの「テレーズ・ラカン」では共犯について解説されていて、日本の裁判では、二人の間に共謀があれば、実行犯でなくても、その者も共同正犯とみなすという独特の考え方が取られていて、これを「共謀共同正犯」と言うそうです。
(これは日本だけの特殊な考え方で、諸外国では共謀共同正犯などというものは認めていないとのことです)
例えば“退屈な旦那がいなくなればいいのに…(殺してほしいの意)”と妻が情夫をそそのかして夫殺害を実行させた場合、妻も同罪となるそうです。
「テレーズ・ラカン」のような事件の場合、実際の裁判では情夫は懲役18年、テレーズは懲役18年か17年といったところだそうです。

映画「激突!」では、クライマックスシーンでデビッドが車を大型タンクローリーに“激突!”させたのは殺人行為とされ、正当防衛にならないそうです。
なぜなら、“車から降りて話し合えばよかった”で、お終いなんだそうです。
もう、“えぇ〜〜〜っっ??”ですよ。
だって、あのタンクローリーは殺す気満々で向かっているようにしか見えなかったし、自分は“正当防衛だ”と思ってましたよ。
(格好よく言えば正面対決のようにも見えた)
だって、“話し合い”の通じそうな相手じゃないでしょうが。
逃げるに逃げ切れない状況に追い込まれていたし。
「激突!」の場合、その刑は懲役10年程度になるそうです。
この映画で追い回される側に感情移入して見た自分には納得しがたいものがありますが…。

プロファイリングの知名度を上げた「羊たちの沈黙」では、モデルとなった猟奇殺人犯は、日本の裁判では、レクター博士のように冷静な判断能力があれば、性癖や性格の異常として責任能力が肯定されることになるそうです。
あのレクター博士、イカれてるけどバカじゃないという、特に厄介なタイプの犯罪者ですよね。
これは他の本で知ったのですが、実際、猟奇殺人や連続殺人をやるような輩に、あそこまで品位を保っている人物はいないそうです。

「アンタッチャブル」では“自白”について解説された項で、日本国憲法では“強要された自白は証拠とはできない”とありました。
(昔の刑事ドラマではけっこう強引な取調べシーンが出てきますな)
まぁ、言われてみると確かに、と思いますね。
誰だって心身共に極限状態に追い込まれたら、やってもいない事を“やりました”と言ってしまう可能性ありますし。
そう考えると「24」のジャック・バウワーなんて、かなり無茶で無謀よね。
“お前を遊んでいるヒマは無い!”と叫んで拳銃ぶっ放して容疑者から話を引きずり出すもんね。
まぁ、自白した中身が事実だからイイけど、アレ違ってたらどうなるのやらと思いますよ。

スイマセン。話がやや脱線しました。

映画『逃亡者』の解説の中で、妻殺し・夫殺しが少なくないことが出ていまして、アメリカのある犯罪学学者の調査によると殺人事件の半数以上が家庭内で発生し、“女性被害者は寝室で、男性被害者は台所で殺される”と言えるのだそうです。
日本の実態調査でも殺人事件の42%が親族間で生じたものとなっているとのことでした。
ちょっとゾッとする数字ですね。
この42%の中には“親殺し・子殺し”も含まれているのかと思うと余計に。

あと、刑罰以外でビックリしたのが『逃亡者』の元ネタになった事件の医師が実は女性関係がかなりハデだったとか、謹厳実直な医師をイメージしていた自分は正直あまり知りたくなかった内容もありました。
(だって、ハリソン演じるリチャード・キンブルは優しい小児科医だったし)


まえがきに“読み終わった時には、刑事裁判のすべてが理解できているはずです”とありましたが、自分はそこまではいけなかったですね。
未見の映画と小説がよけい見たくなってきてしました。
(「1Q84」も読もうかどうしようか、「灰とダイヤモンド」もせっかくDVDになったし買おうかどうしようか迷っているトコだったし)
アッタマ悪いせいか考えることが増えてしまったような気も…。
あ、でも、分からないことを考える良い機会をもらえる本だと思います。
あとがきにもありますが、1回読んだだけで終わりではなく、一度通してまた読み返して少しづつ学んでいくのが良いのかもしれません。

勉強になるし、本として楽しめる魅力もあるので、第二弾を期待してしまいますね。
紹介されている映画に洋画が多かったので、次は邦画を中心に解説本を出してほしいです。


あなたが裁く! 「罪と罰」」から「1Q84」まで〔森炎〕
完全犯罪か 冤罪か!?
死刑台のエレベーター=ジュリアン、異邦人=ムルソー、模倣犯=ピース、悪人=清水祐一、IQ84=青豆……本当に裁判にかけた ら、死刑か無罪か、懲役何年が相当か?
【目次】
1章 殺意にかられる「魔の瞬間」
(ロバート・ワイズ「ウエスト・サイド物語」―殺人事件の標準は衝動的殺人;ジョージ・スティーヴンス「陽のあたる場所」―湖上のボート転覆殺人は無罪か死刑か ほか)
2章 「計画犯罪」の死角
(ドストエフスキー「罪と罰」―ラスコーリニコフは、本当は死刑!?;ルネ・クレマン「太陽がいっぱい」―華麗なるアラン・ドロンの死体なき殺人事件 ほか)
3章 犯人と被害者の「さまざまなる情状」
(アンジェイ・ワイダ「灰とダイヤモンド」―テロリスト、暗殺者も死刑にはならず;レマルク『凱旋門』―恋人の復讐のための殺人、その是非は ほか)
4章 裁く者にとっての「法廷の掟」
(ジェームス・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」―交通事故偽装殺人と裁く者を惑わす魔力;J・M・ディラード「逃亡者」―逃げるリチャード・キンブルをどう裁く? ほか)
5章 現代ミステリーが描く「闇と光」の虚実
(東野圭吾「容疑者Xの献身」―同情すべき殺人の刑罰はどこまで下がるか;宮部みゆき「模倣犯」―中居正広演じるピースの猟奇殺人は無罪かも? ほか)

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