凶夢など30〔星新一〕

画像都会からはなれた小さな入江で出会った老人と新婚の夫婦。
その夜、老人が見たのは、新婚の2人が殺しあう夢だった。1年後、老人はまた同じ夢を見た。
不思議な夢を気にした老人は、名産品を2人に送って様子をみる。
礼状が届き、何事もなかったかと、安心する老人。
この繰り返しが、何年も続いたのだが…。
夢想幻想の交錯する不思議な世界にあなたを誘う夢のプリズム30編。


表題作の「凶夢」は途中まではイイ話っぽく進みますが、最後まで読むとタイトルの意味がわかる話でした。
ある老人が入り江で出会った夫婦の間にすきま風が吹くたびに贈り物や手紙を送り、二人の仲を繋ぐ役目を果たしていたが…。
初めて読んだ時には、老人特有の心遣いとカンの良さを不思議に思っていましたが、いいトシになって読み返すとファンタジーでしかないなと思いますね。
“この夫婦、こういう結末を迎えるだろうなー”って感じ。
バカ夫婦がどうなろうと知ったこっちゃないけど、年寄りの長年の思いやりと心配りがムダに終わってしまうのが悲しいです。
でも、この短編に「凶夢」とつけた星新一氏の意地の悪さが好きです。

「深い仲」もケッサクですね~。
いろんなタイプの女性と楽しんでいるつもりが、実は全て“スポーティなことも好きな”自分の妻の分身であるという、男性からしたら何ともやり切れない話です。
星さんのショートショートは他でも夫が妻にギャフンと言わされるタイプの話がちょくちょく出てきますな。
“なんか、ヤなことあったのかなー?と勘ぐりたくなりますわ。

「鬼が」も淡々としているのに薄気味悪さがイイ感じな話でした。
しかし、よそ者に鬼退治させなくても…と思いましたが、日本ならではのずる賢さと土着的な感じがまた気持ち悪いんですよ。
小さなトコで結託できるクセに大事は人任せって、日本社会に有りがちですよね。
“鬼とは結局何なのか?”わかるような、わからないようなモヤモヤするオチがまた気持ち悪さ倍増でした。


凶夢など30〔星新一〕
【目次】
ウエスタン・ゲーム
王さまの服
暗示療法
深い仲
たねの効用
ひどい世の中
指示
ある夜の客
好奇心
鬼が
体験
夜と酒と
マイナス
ある一日
書斎の効用
夏の女
妖怪
才能を
手さげバッグ
川の水
退屈
病名
多角経営
甘口の酒
宿直
凶夢
目がさめて
印象
生きていれば
捕獲した生物

解説:山本孝一
カット:真鍋博

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