さまざまな迷路〔星新一〕

画像迷路のように入り組んだ人間生活のさまざまな世界を32のチャンネルに写し出し、文明社会を痛撃する傑作ショートショート。


他のショートショート集よりオチが意地悪く、怖くて読後にゾクゾクくるような話が多いです。
中でも「森の家」と「骨」の不気味さが最高です。

「森の家」は、強盗が森の中の一軒家に逃げ込みます。そこに住む老人の持つ金貨に目がくらみ…と、これ以上書くとネタバレになるので止めておきます。
オチは見えてくるのですが、だんだん衰えて弱っていく男の描写がリアリティーがあって怖いです。

「骨」は星新一ショートショートの中でもダントツの気持ち悪さじゃないかしら。
ある青年が山の中で不死身になったと言い張る男と不本意に関わってしまい、死んでも死んでも追いかけてくる自称・不死身男を粉々にしてしまう羽目になります。
青年は警察に助けを求めるのですが、あまりにも突拍子も無い出来事なので、警察の方も信じず、そのお陰で青年は無罪放免されるのですが、不死身男の執念は、この世に留まり続けている…と思わせるラストでした。
どう見ても死んでるのに“死んでいない”と言い張る不死身ヤローのしつこさと頑迷さにイライラするし、不死身ヤローの描写が気持ち悪くてたまりません。(ターミネーターがカワイく感じるくらい)
最後に出てくる動く“骨”も、また怖い。
しかし、怖いけど、これがまたおもしろい。
何故か何回も読んでしまうショートショートの一つです。

他は、不気味で怖いというんじゃないけど“怖いかも?”と思ったのが「ホンを求めて」
“ホン”は素晴らしいものらしく、“ホン”があるともっといい暮らしができるらしいと、ホンを求めて密林の洞窟から旅立ったボギ。
“ホン”は先祖の先祖の時代にいたるところにあったそうですが、映像やら幻覚やらが流行しだすと、皆“ホン”を捨てて使わなくなってしまった…という話でした。
昭和の中頃から“活字離れ”は進んでいたのでしょうけど、今はもっと深刻で“ホン”そのものが無くなってしまうかもしれない危機的状況にありますよね。
悲しいけど、今の時代にも通じる話で、“さすが、星新一恐るべし”と思いました。


さまざまな迷路〔星新一〕
【目次】
全快
町人たち
使者
重要な任務
森の家
ことのおこり
再現
しあわせな王女
ホンを求めて

因果
小鬼
過渡期の混乱
しあわせなやつ

目撃者
コーポレーションランド
判定
末路
ベターハーフ
小さな記事
みつけたもの
出口
名画の価値
三段式
かたきうち

すてきなかたねえ
一軒の家
買収に応じます
発火点

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